俺、昔犬を飼ってたんだ。
名前はチュリって言う雑種なんだけど。
賢い犬でまだ小さかった俺のお守りをしていてくれたらしい。
両親は共働きで小学校1年のときから鍵っ子だった。
家にはチュリがいたから寂しくはなかったんだ。
そんなチュリも俺が小5のときに死んでしまったんだ。
俺は、もう悲しくて悲しくてそれが元でちょっと体調を崩してしまったんだ。
熱を39度くらい出てしまって脱水症状を起こして、病院に短期入院した。
そこの病院が幽霊がよく出るって言う噂の悪名高い病院で俺は嫌だった。
でも、仕方なくそこに入院したんだ。

その夜、案の定幽霊に遭遇。
出た幽霊は、16歳くらいの男の幽霊だった。
メガネかけてて、坊主で目の辺りが窪んでて気味が悪い幽霊だった。
そいつは、俺の横に立って壁に向かってぶつぶつ言ってんだよ。
もう怖くて怖くて、布団を頭からかぶってぶるぶる震えてたわけなんだが、
ふっ、とそいつの気配がなくなったと思って、恐る恐る布団から頭を出すと、
坊主頭の幽霊の変わりに、今度は着物着た女がドアの隙間から、
俺のほうをジーっと見てんだよ。
俺はもう怖くてどうしようもなかった時に、ふとチュリに助けを求めてみた。

「チュリ助けてくれー」って

そうしたら、さっきの坊主頭の声が聞こえてきたんだ。
今度ははっきり聞こえた。
「塾に行かなきゃ、塾に行かなきゃ」
俺は、塾にでもどこでも行けよーと思いつつ、
相変わらずチュリの名前を呼び続けた。
そしたら、窓の外で犬の遠吠えが聞こえたんだ。
近いような遠いような場所から「ワォー!ウォー!」ってな感じで。
そしたら、坊主頭の幽霊が、
「ちっ!」って舌打ちしたと思ったら気配が消えた。
そして、次の瞬間部屋のドアが、バンッ!て閉まる音がしたんだ。
ものすごい勢いで閉まる音だった。結構な範囲に聞こえるくらいの音だった。
そしたら、看護婦さんが来て「どうしたの?」って聞いてきたから
今までの経緯を話した。

そしたら、「やっぱり出たのね・・・」って言って、
「首とか絞められなかった?」と聞いてきたからそれはないと言うと
その坊主頭の幽霊はよく人の首を絞めようとするらしい。
多分、チュリが助けてくれたんじゃねーのかなって思う。
犬の遠吠えって結構な力を持つらしいから。
ありがとうな、チュリ。

あのあと、母ちゃんから聞いたのだが
俺が入院して幽霊と遭遇している夜に
やっぱり、犬の遠吠えがチュリを埋めたところでしたらしいんだ。
そしたら、それに反応してほかの犬も遠吠えを始めたらしい。

それから数ヶ月後、父ちゃんが新しい雑種犬を拾ってきた。
そいつは、散歩の途中にでかいシベリアンハスキーから
俺を身を挺して守ってくれた猛者だ。
ぜんぜんチュリには似ていない犬だが頼もしいやつさ。
俺は犬運に恵まれている。 


【引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?part105】