今年のお盆に地元に帰省して一人で墓参り行ったときのこと。

実家の墓がある墓地は、駐車場を一段上がったところに広い墓地が広がってて、
さらに奥に行くとさらに階段があって、そこを登ると
小さい墓地が点在してる構造になってる。
広いほうの墓地にある実家の墓参りを済ませたあと、
数年ぶりに帰ってきたことだし、ちょっと散策するかなって気になった。
奥の階段を登ると、ちょっとした小道になってて、
墓地の反対側まで抜けることができた記憶があったので、ずんずん進んでいった。
途中、ちょっと開けたところにまた墓地があったんだが、
その左奥にある墓が目にとまって、なんの気なしに近づいたんだ。

それは随分と古い墓で、墓石の一部は苔生しており、
もう長いこと人がお参りしていないような雰囲気だった。
あまり無関係な墓に近づくのもアレだしと思って、
すぐにその場を離れようとしたんだがその時、不意に
「エツコさん、随分と遅くなりました」って言葉が口をついて出てきたんだ。
まったくの無意識で呟いた言葉で、自分でもなんでそんなことを言ったのか
訳が分からず「えっ?何?俺何言った??」って混乱していると、
ラジオみたいな声というか音が頭の中に鳴り響きはじめた。
それと同時に、とてつもなく胸が締め付けられる感覚に襲われて、
ああ、みんな死んでしまったんだな、っていう
懐かしいような悲しいようなそんな感情に包まれ始めた。
得体のしれない感情に怖くなった俺は慌ててその場を逃げ出した。

特にこれといった後日談もなく、それだけのことなんだが、
俺にとってはかなり不可解な体験だった。 


【引用元:不可解な体験、謎な話~enigma~ part74】