A坊主の話

その日はAの檀家の法要で、たまたま俺が休みで暇だったので一緒に行った。
夕方に法要を済ませ帰りは俺の運転だったのだが、
この土地に不慣れな俺とAは狭い道に入り込んでしまい迷ってしまった。
まあ西の方とはいえ都内だし適当に進めば幹線道路に出るだろう、
と適当に車を走らせる。
しばらく進むと踏み切りがあった。
踏み切り前で一時停止すると、カンカンカンカンと遮断機が作動。
ほんの数秒ボーっとしていると中学生くらいの女の子が車の脇を通り、
遮断機をくぐって線路内に入り込んで行くのが見えた。
真ん中くらいでこちらを振り返り、笑顔で手を振っている。
なんか、呼ばれているみたいで何でだか知らないが車を降りる俺。
(電車くるな…あの子危ないな…)とかぼんやり考えてたと思う。
俺が危ないとは全く考えず、ただその子を連れ戻そうと遮断機をくぐる。
Aが何か言ってるが全く耳に入らなかった。

いきなり足を掴まれて遮断機の外に引っ張り出される俺。
次の瞬間、電車が警笛を鳴らし頭の先2mくらいの所を走り抜けた。
「馬鹿野郎、何やってんだ!!」
ハッと我に返って女の子がどうなったか線路内を見回す俺。居ない。
「ここに花が供えてあるよな。つまり、ここはそういう場所だ」
見ると踏み切りの脇に花やらお菓子やらが供えられてあった。
しかも一ヶ所じゃなくて、よく見るとお供えが点在してた。
前にAから聞いた話が頭に浮かび、背筋が冷たくなった。

「霊に直接殺されるなんて物理的にあり得ないwだから人を惑わして『呼び込む』んだ」

はじめてその言葉の意味がわかったわ。
Aが居なかったら、間違いなく呼ばれるままに進んでいただろう。
恥ずかしながら腰が抜けてしまったので運転代わってもらい帰りました。 


【引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?part171】