大学時代に付き合ってた彼氏の話です。

付き合い始めて一年半ほどたったころ、彼は引っ越したのだが、
その頃からあまり夜に求めてこなくなった。
浮気してるか、別れたくなったのか、疑心暗鬼になった私は、
ある日酔った彼に問い詰めた。
彼はなんだかんだと理由をつけて、なかなか口を割らなかったのだが、
とうとう観念したのか、こんな話を私にした。

引っ越してからすぐ、夜寝ていると物音で目が覚める。
シャンシャンという金属音だが、出所がよくわからない。
一週間ほどたったころ、その物音で目覚めると、
奥の部屋からそろりそろりと和服の女が近づいてきた。 

彼は驚いたが、なぜか体が動かず、声も出すことができなかった。
女は彼の横に添い、何か語りかけると、そのままえろいことを始めた。
彼は恐怖でそれどころではなかったが、
体は動かず、女のされるがままにいたという。
女は事を終えると、感謝の言葉をかけ、部屋の奥に消えた。
それと同時に動かなかった体の縛りが解けた。
それが二日に一回のペースで今まで続いてきているという。
最近は体の金縛りがなくなり、彼も共に行為に及んでいるとか。
行為の最中はもう意識が定かでなく、無我夢中になってしまい、
終わったあとはすぐ寝てしまい、よく覚えてないとか。

彼は本当に怯えており、二人で対策を練ったが、
素人どうし、なにもいい案がでるはずもなく、
結局近い内に引っ越そうという結論に至った。

その数日後、彼の部屋に泊まったとき、
夜中にふと物音で目覚めると、彼氏が戸を開け、外に出ようとしているところだった。
声をかけると、振り向いた彼の目は虚ろで、
サキと一緒に行ってくるよ、と言った。
私は慌てて彼を引き止め、ひっぱたいたり、烏龍茶を頭からかけたりして、
彼の目を覚ました。
我に返った彼によると、
女が枕元に現れ、様々な誘惑の言葉をかけられ、
全く抵抗できず誘われるまま外に出ようとしてたとのこと。
その際、散々な言われようで私の悪口を言っていたらしい。

彼はその日以来部屋には帰らず、友達の部屋に居候し、
部屋は引き払い、引っ越した。
その後は私たちの前に女が現れることはなかった。

彼とはその後しばらくして別れてしまったが、
先日同窓会で会ったとき、思い出話でなんとなくその話題をふったら、
ものすごい剣幕で怒られた。
これは勘だが、まだ彼はあの女から逃げ切れてないのかな、そう感じた。 


【引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?part275】