俺は、趣味でサイクリングをやってる。
仕事が忙しくて毎日は乗れないけど、
たまの休日には遠くまで走ったり、山を登ったりして楽しんでる。

で、この前のGWに、久々に実家に帰ることになったから、
一緒に自転車も積んで帰ったんだ。
自転車に目覚めたのが「一人暮らしをし始めてからだった」ことと、
今住んでるところと実家はかなり離れていることから、
慣れた道をガチな自転車で走る機会は今回が初めてだった。
実家について次の日、早速俺はサイクリングに出かけた。
晴れてたし、空気は澄んでたし言うことなしで、楽しい時間を過ごした。


山を走りまわってると、脇に小川が流れてるのを見つけた。
ボトルの中身も無くなってたし、水を汲んで帰ろうとしたら、
視界の端に「木で出来た鳥居」が見えた。
いや、もはや木と言うより枝で組んであるような…それくらい細い鳥居だった。
近づいて見てみると、鳥居の股下を小川が流れていた。

「なんだこりゃ」と思って、そのまま帰ろうとすると、服に少しの抵抗感があった。
ジャージが引っかかってしまって、鳥居を倒してしまったんだ。

どんだけ脆いんだよ…と思いつつ鳥居を直して、帰ろうとしたら、
耳元で「いね」と声が聞こえた。
ドスが効いた声じゃなくて、澄んだ声だった。

びっくりして周りを見回しても、誰もいない。
思わず鳥居に「すみませんでした」と謝って、速攻山を駆け下りたよ。

でも、あの時聞こえた声、今思えば「しね」だった気もしなくもないが…
なんとか無事に、家に帰りつけました。 


【引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?part299】