知人のオジサンが話してくれたんだが
その日は仕事が早く終わったか何かで、珍しく夕方頃に自宅最寄り駅についた。
家に向かって歩いていると、向こうから傘をさした女の子が歩いて来る。
晴れているのに変わった子もいるものだと思っていたら
女の子はオジサンの出身高校の制服を着ていた。
懐かしいなぁと思いつつすれ違い、
ふと横顔を盗み見るとなにやら見覚えのある顔をしていた。
反射的に振り返ると 、それまで真っ赤に染まっていた筈の街並みが
一転して灰色がかった小雨の降る街になっていた。

しかも、オジサンが高校生だった頃の街並みになっていて
女の子は古本屋(今はない)の軒先で雨宿りする少年に何やら話し掛けていた。

あっと思った時には、街はまた真っ赤に染まっていて
オジサンはあの女の子と軒先の少年のことを思い出したんだそうだ。

女の子はオジサンの初恋の人で、少年はオジサン本人。
たった一度だけ会話した、大事な大事な思い出だったらしい。

当時、色々と大変で自殺まで考えていたオジサンだったが
なんとなく心が暖かくなって、まだまだ頑張れると思えたそうだ。


【引用元:不可解な体験、謎な話~enigma~ part75】