俺の母校ではないが、親父が長野県のY中学で教員をやっていた時に聞いた話。
話を聞いたのが小さい頃だったので、詳細はあんまり覚えてない。

ある日の早朝、学校の前の通りで「ドン」って大きな音がした。
何事かと行ってみると、人だかりができていて、
その学校の音楽教師が轢かれてたんだと。
救急車で病院に運ばれたけど、その女性教師は結局助からずに死んでしまった。
合唱コンクールだか何だかが時期的に迫ってきていて、
やる気に満ち溢れていた矢先のことだったらしい。
それからしばらく経ったあと、戸締り確認の役が親父に回ってきたので、
校内を巡回して、最後に音楽室のある棟に行った。
音楽室は三階のつきあたりにあるんだけど、
二階と三階の階段の踊り場あたりに来たとき、かすかにピアノの音が聞こえてきた。
親父は「こんなに暗くなってるのにまだ練習してるのか、頑張ってるなー。」
と感心しつつも、もう戸締りの時間だから下校させなきゃなと思いつつ
階段を登っていった。

廊下までたどり着いて気づいたんだけど、なぜか、音楽室の明かりが付いてない。
夏とはいっても、外はもう真っ暗で、明かりがなければまともに鍵盤も見えないはず。
なんか嫌な感じがするなー、と思ったけれども、
生徒が残ってるといけないの、仕方なく音楽室を確認しに行くことに。

ドアの前まで来たとき、ピアノの音が止んだ。
親父は、意を決して音楽室のドアを開けた。
けど、誰もいない。

うわーっと思って、戸締りの事を完全に忘れて、廊下を走り、駆け足で階段を下りた。
走ってる最中、頭は混乱してたけど、
音楽室の方向からまたピアノの音が聞こえたんだと。


【引用元:お前らの学校であった怖い話】